福岡市議会
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3.スウェーデンの福祉施策
 3.1.スウェーデンの福祉施策に関する評価
 
 北欧諸国は、高福祉・高負担の国として知られている。福祉政策は充実しているが、他方で国民の税負担も高い。そのような福祉国家の代表国として常に名前を挙げられるのがスウェーデンである。スウェーデンの国民負担率(税金と社会保障費のGDPに占める割合)は70%を超えている(日本は2007年度見込みで39.7%)。消費税率は25%と、先進国の中で最高である。同国が福祉国家の代表例として挙げられるのは、このような高福祉・高負担を制度化しているにもかかわらず、現在でも経済成長を続けているからである。
 
 それでは、なぜ福祉国家においても高い経済成長が可能なのか?その要因の一つとして、スウェーデンの産業構造の特徴が挙げられる。北欧に代表される福祉国家は共通した産業構造をもつ。まず、生産と需要が国内でバランスしているため、失業者が出にくいという特徴がある。保育や介護といった分野では女性の活用が進んでいる。保育サービスが社会インフラとして定着しているから、少子化に歯止めがかけやすい。実際、スウェーデンは今後も緩やかながら人口増が予想されている。人口が増える国には海外からの投資増も含めて、長期的にも経済成長が可能である。
 
 さらに、福祉政策と労働政策をリンクさせている点も特徴である。これは、成長を促進する市場の柔軟性と、勤労者の所得保障・平等の双方を追求するモデルでもある。政府は手厚い失業補償や職探しのための積極的な後押し、特定企業での就業に縛られない年金・医療保障プランを用意する。その狙いは、特定企業における雇用保障ではなく、雇用の流動性を促進しながら、労働者の所得を保障することである。職は生まれては消え、会社も登場しては退場するが、勤労者は新たな職に就き、経済効率は上昇する。北欧諸国においては、年金・医療・介護の分野で勤労者の将来に対する安心を確保したうえで、市場の経済性は十分に機能させる。このような制度設計が、高福祉高負担であるにもかかわらず、経済成長を実現させているのである(注釈6)。
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(注釈6)スウェーデンの福祉施策については年金・医療・介護も含めて多岐にわたるが、視察期間の制限もあり、今回の視察においては、その中でも障がい者福祉、高齢者福祉、児童福祉の3つの分野に限定している。なお、スウェーデンや北欧諸国の政策の評価については、「週刊東洋経済2008年1月12日号」pp.36-41を参考にした。