福岡市議会
民主・市民クラブ
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 2.6.総括
 
 フィンランドを訪問して実感したことは、フィンランドでは「子どもが学ぶ権利」が最大限に尊重されているという点である。その権利を確保するために、教育機会の徹底した平等性を確保するという観点から、少人数学級であるにもかかわらず、各授業においては担任とは別にアシスタントと呼ばれる補助教員が付いており、担任の手の回らない部分をサポートしている。さらには、特別な支援が必要な、または問題を抱えた児童生徒に対して早期に必要な支援を行うために各校にスクールカウンセラーとケースワーカーが常駐している。このように、教育現場の状況が本市のそれと大きく違うことに驚いたが、これら手厚い人的サポートが、学力の高いグループと低いグループの差を縮めている、言い換えれば、いわゆる「落ちこぼれ」を作らない要因なのではないかと実感した。
 
 また、フィンランドで公立学校を訪問した際、意外だったのは、「中央省庁や地方自治体が、各学校の成績や学校運営の状況を評価・監査することはない」という説明を受けたことである。その教育レベルの高さが世界的に認められているフィンランドでは、熾烈な学校間競争や、常に中央省庁の監査評価にさらされているような環境下で「義務教育の質の保証」がなされているものと思い込んでいたからだ。
 
 それでは、なぜフィンランドでは「義務教育の質が保証」されているのか?それは、学校・家庭・地域がそれぞれを「信頼(trust)」しているからだ、そのようにフィンランドの公立学校長は説明してくれた。競争や監査がなくても、学校・家庭・地域それぞれが子どもたちの健やかな成長を心から願っているのだから、そのためには協力は惜しまないはずだ。このような意識が前提となっているため、競争や監査がなくても、各学校で均質な教育レベルを維持できるのだということであろう。