福岡市議会
民主・市民クラブ
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  1. 3.4.県営青少年心療外来(BUP:Barn-och ungdomspsykiatri)
 
【概要】
 BUPは、県が運営する0〜18才の児童生徒が対象のカウンセリングセンターである。家庭内暴力、性的被害、戦争難民、引きこもりなどの受け入れ・治療を行なっている。また児童生徒とその家族を専門機関に送ったり、精神病、妄想、幻覚、自殺の危険性がある症状には、隔離された治療施設の入院手続きなども行なったりしている。同施設では、組織の内容や活動内容と現状や課題などレクチャーを受け、意見交換を行なった。
 
【視察内容】
 日本語に直訳するとBUPは「青少年心療外来」という意味である。当初の説明では児童相談所のようなものをイメージしていたのだが、それはあくまでもスウェーデン社会福祉局の仕事であり、BUPはその名のとおり「病院」という位置づけであるようだ。ここでは、児童福祉を扱う社会福祉のドクター、臨床心理士等の専門家が集まっている。あくまで病院である。性的な虐待、親からの虐待、学習困難者の外来等、心理的障がい、知能障がい、移民の子ども等を受け入れている。
 
 特に、学習困難者や心理的障がいのある子どもたちについては、その疑いがあることを最初に発見するのは学校である。生徒の異変を早期に発見する仕組みが充実しているスウェーデンの学校においても、学校内のスタッフだけでは解決できない問題に対しては、学校はその子どもの親に対してBUPに相談に行くことを勧める。BUPでの診療の結果、専門的な治療や入院が必要な子ども達には、それなりの機関を紹介する。スウェーデンにおいてBUPは、学校では対応できない(心理的な障がいが疑われる)子ども達が、とりあえず最初に来るところとして認識されているようである。BUPでは、1人の外来患者に対して2名のスタッフで診療に当たり、どのような症状であるかを診断する。家族に対するケアも重要な仕事であり、2名のスタッフのうち、1名は家族サポートに当たる。
 
 BUPには、親から電話で相談があってから、遅くとも4週間以内に直接診療を行う義務がある。救急の場合は、24時間以内に診療しなければならない。救急の場合とは、自殺未遂、精神異常が行動に出た場合、重度のうつ病、極度の拒食症等の症状がみられる場合を指す。2007年から2008年までの1年間で、969名の子ども達を診断。そのうち100名が救急患者である。患者となる子どもたちの男女比は50:50で、この人数は年々増加傾向にある。とりわけ、女子の15歳から17歳までの患者が約20%と多い。一般的な治療の仕方は、まずは親を安心させることが一番とのこと。
 
 スウェーデンにおいては、親からの虐待が疑われる子どもの場合、通常は社会福祉局に対して通報され、必要に応じて、社会福祉局が児童相談所に受け入れる仕組みになっている(もしくは里親を見つける)。先述したように、これは社会福祉局の仕事である。
 
 日本では、心療内科に対する偏見はなくなってきているとはいえ、なかなか自分の子どもが精神疾患を持っているとは認めたくないものである。スウェーデンでは、精神疾患の兆候があればまずは学校が発見する。親は、学校の勧めでBUPを訪問する。その際に学校が親に対して主張するのは「子ども達の権利が最重要」である点。子ども達には、診療を受ける、必要に応じて治療を受ける権利があるということが重要視されているのである。スウェーデンにおいては診断する子ども達の数が年々増えてきているということであり、早期発見のために学校のカウンセラーの体制を強化することが急務となっている。