福岡市議会
民主・市民クラブ
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 2.5.ソトゥンギ高校
 
【概要】
 ソトゥンギ高校は、ヘルシンキに隣接したヴァンター市にある高校。校長はマリヨ=マキネンロッポラ。生徒数役430名の一般的規模の高校である。フィンランドの高校は地域により特色を持たせている場合が多いと聞いていたが、同校は語学(8カ国語が学べる)、音楽・美術などの芸術、またIT授業にも力を入れており、それぞれの専門家(プロ)として教員は生徒に接していた。
 
【視察内容】
 はじめに、ソトゥンギ高校の図書館において、学校概要について校長から説明を受けた。ソトゥンギ高校には230名が在籍しており、建物の2階部分が高校、1階部分が中学校になっている。事前の説明では全校生徒が430名と聞いていたが、実は同じ建物の中に高校と中学校が混在(すなわち、中高連携校のような作り)しており、残りの200名は中学生とのことであった。高校は単位制をとっており、各生徒は自分が必要と思う授業を選択し、卒業に必要な単位を取得することになる。
 
 その後、高校の生徒サービスチームで相談員として勤務する女性から、生徒サービスチームの構成とその特徴を聞くことができた。ちなみに、ソトゥンギ高校はこの生徒サービスチームが充実していることでも有名な高校であることを今回のヒアリングで知った。生徒サービスチームにおいては、このサービスの中心にいるのは生徒たちである。教員をはじめ、カウンセラーやケースワーカーが生徒たちの学習や進路の悩みを早期に解消するために、万全の態勢をとってサポートしている。この生徒サポートチームのメンバーは、生徒一人ひとりの「教育を受ける権利」を保障するために、快適な教育環境を守るという使命を持っている。学習進路相談員は、必要に応じて、学校外のスタッフとの調整を行うコーディネーターとしての役割も担っており、非常に重要なポジションであることも確認することができた。
 
 図書館での説明を聞いた後は、実際に校舎内を回り、いくつかの授業を見学することができた。校舎内を歩いて各教室に足を運んでみて最初に気になったのは、各教室のドアにはすべて施錠ができる仕組みになっている点である。校門や学校の外周には目立った門扉があることに気付かなかったが、各教室には鍵がかかるようになっており、授業が始めると、鍵を閉めて外側からは入れなくするらしい。日本とはセキュリティの概念が大きく違うことを実感した。
 
 特にIT教育に力を入れているということで、PCルームが充実していることはもちろん、廊下の至る所にPCが設置されており、生徒たちは自分のアカウントを用いて誰でも自由に使用することができる。また、校長が強調した「オープンな教育環境」というのも、ほとんどの教室はガラス張りで中の様子が分かるようになっていることからも納得ができた。遮音効果も抜群とのことである。
 
 また、生徒会活動も活発で、今回の視察では生徒会役員3人との意見交換も実施した。自分達の生活環境は自分たちで守るという気概が強く、現在は構内売店の充実も活動目標の一つであるらしい。生徒会長は、高校を卒業したらヘルシンキ大学の医学部に進学したいという将来の夢も語ってくれた。さらに英語の授業では、日本人が訪問するということで、英語による意見交換を実施した(右写真)。日本や福岡の概要について説明したが、生徒たちの質問や反応を見ていると、フィンランドではあまり日本のことは知られていないように感じた。ちなみに、日本で20年以上前にヒットしたあるバラエティ番組が深夜に放送されており、非常に人気があるとのこと。その番組は、フィンランドでは「クレイジージャパニーズ」という名前で放送されている。
 
 最後に校長との質疑応答の時間があったのだが、ここでも学校運営の在り方について日本との大きな違いを実感した。フィンランドの高校では校長の権限が非常に大きく、自分の教育目標を実現するために必要なスタッフをそろえるという考え方が強い。これはメリウスバ小学校やクオッパヌンミ総合学校においても共通に見られた考え方である。フィンランドの校長や教師は、自分たちが勤務する学校に愛着をもって仕事をしているということが確認できた。