福岡市議会
民主・市民クラブ
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1.問題意識
 
 木村忠正・東京大学教授が実施した「世代間の国際比較調査」によれば、日本では自分の世代より子どもの世代が幸福になるという回答はほとんどない。「どちらかといえば子どもの世代(の方が幸福)」という回答を含めても、子どもの世代の方が自分達の世代よりも幸福になると考えている日本国民は二割を大幅に下回るという。この調査結果から分かることは、日本社会では未来への希望は消失しているということである。なぜ日本国民は、自国に対する未来への希望を失っているのか。それは、「日本は自分や子ども(子孫)の将来の安全・安心を担保してくれる国ではない」、言い換えれば、「これからの日本が、今以上に豊かな国となるようなイメージが描けない」と、多くの日本国民が実感しているからである。
 
 確かに、現在のわが国を取り巻く環境、マスメディアを通して国民に伝えられるわが国の現状を見聞きすれば、おおよそ悲観的な見方が大勢を占めているように思われる。国内的な問題としては、財政難と急速に進む少子高齢化のなかで、自分達の安心・安全を担保してくれる社会保障(年金、医療、介護)制度が今後立ち行かなくなるということ。対外的な問題としては、これまで世界で2番目の経済大国としてアジアの中でも存在感を誇示していたところが、近年の中国やインドといったアジア諸国のめまぐるしい経済発展が世界で脚光を浴びる中で、次第にその存在感を示すことが出来なくなっているということ。これらの事実が、日本国民が自国の将来に対して楽観的な思いを抱かせてくれないという点は、多くの識者が指摘するところでもある。さらに、日本が世界に誇るその教育レベルの高さや、それに裏打ちされた高度の技術力に関しても、2003年に実施されたOECDによる学力到達度調査(PISA)の結果が、「読解力」が8位から14位に、「数学的リテラシー」が同じく1位から6位に転落したことが判明し、これら教育や技術に関しても、日本はもはや世界の最上位国ではないという現実を突きつけられている。換言すれば、これまで世界のなかで存在感を示す源泉となっていたわが国の「国際競争力」が次第に低下しており、今後さらに低下が進むのではないか、多くの国民がそのような意識を持って悲観しているということである。
 
 これら日本国民が悲観的になっている政策分野(社会保障、経済、教育)を立て直し、それぞれの政策分野において、将来についてのきちんとした見通し(デザイン)を国民に示すことこそ、今の政治に第一に求められている課題と考える。われわれ市議会議員も、国政レベルの観点で今後の日本がとるべき戦略(グランドデザイン)を構築し、その戦略に基づいた具体的な処方箋を、地方政府の一員として提示することが求められているといえよう。
 
 そのような問題意識の中でわれわれ視察研修団は、日本がとるべき戦略を構築するために、「教育」分野の先進地としてフィンランドを、「社会保障」分野の先進地としてスウェーデンを訪問する。フィンランドは2006年実施の学力到達度調査において、「科学的リテラシー」では世界1位、その他の分野においても2位もしくは3位に入るという、世界屈指の教育レベルを誇る。スウェーデンはその社会保障制度が「スウェーデン・モデル」と呼ばれるほどの手厚い社会保障制度を構築している国である。それぞれの政策分野において、両国の教育制度および社会保障制度をやや批判的な観点から調査し、それら制度のわが国への適用の可否を探るとともに、地方自治体である福岡市が参考とすべき取組みを見出すことが、今回の視察研修の目的である。