高島市長は5月24日、福岡市立こども病院をアイランドシティへ移転することを発表しました。昨年11月の市長選で高島市長は、前市長時代の検証プロセスを明らかにするとして、白紙見直しを公約し当選しましたが、最終的な結論は前市長の決断をそのまま踏襲するものとなりました。高島市長が作った検証委員会での議論は半年間に及びましたが、1,500万円もの費用に見合った成果があったとは評価し難く、その後の高島市長自身の「決断プロセス」にも重大な疑義が生じました。
会見の席で高島市長が繰り返し強調したのが、こども病院の移転による「西部地区の小児2次医療の空白化」という言葉です。しかし移転後の小児医療の維持に向けては、前市長時代から九州医療センター、浜の町病院、福大病院など14病院の協力で空床情報のネットワーク構築などが進められており、「空白化は起きない」というのが福岡市の立場でした。しかし、高島市長はこうした経緯には全く触れずに「空白化」をことさらに強調し、「医師会病院に小児2次医療の診療科を設けるお願いをした」と発言。この発言は、市がこれまで協力要請してきた九州医療センター・浜の町病院との小児2次医療に関する協議を全く無視した唐突なもので、「移転反対の市民を意識した安易なパフォーマンス」と評価せざるを得ないものでした。
高島市長の一連の言動には、西部地区の小児2次医療を支えるために日夜努力を重ねている医療機関からも疑問の声が上がっています。福岡大学病院では、6月10日に高島市長あてに正式に抗議。同病院は急患診療センターから年間で200人を超えるこどもの搬送を受け入れるとともに、センターへの医師派遣にも協力しており、こうした努力を一顧だにせず高島市長が西部地区の医療空白について言及したことに、同病院は「甚だ不本意であり到底承服できない。市長は小児科医療の現状を理解されているのか疑問である」とコメントしています。
一連の問題についての高島市長の真意を問うため、6月議会では太田英二議員(城南区)が会派を代表して一般質問に登壇。高島市長に対し「市の小児医療に対する理解が不十分である」との厳しい指摘をした上で、医師会に対し新たな小児科開設を依頼したとする市長会見での発言について問い質しました。これに対して高島市長は「医師会への要請は小児科新設をお願いしたものではない」などと、前言撤回ともとれる釈
明を行いました。一方で、市長の不透明な決断プロセスについて説明を求めたのに対しては、明確な答えが得られませんでした。こうした高島市長の答弁については、翌日の新聞朝刊で「跡地問題トーンダウン」などの見出しで報じられました。
福岡市は現在もおよそ2兆6千億円の借金を抱えています。こどもたちの未来のため、いま真剣に向き合わなければならない課題です。どんな公共事業・公共投資でも、それが本当に必要なのかを厳しくチェックするのは、議会人である私たちに課せられた使命です。「こども病院を移転させ、跡地やその周辺にまた税金を使って病院をつくる」。こうした結論に安易に達することは、こどもたちの未来により大きなツケを残す恐れがあります。移転開業は3年後の秋。私たちはその日まで「こどもたちの命のため」「こどもたちの未来のため」という2つの視点から、この問題と向き合っていきます。